複数国籍について、つらつら考えてみたい。
日本人にとって日本国籍があることはほぼ当然なことなのだけれど、日本に住んでいる日本人にも日本国籍がなかったり、世界中には国籍がない人が約1200万人もいる。例えば、日本では日本人の両親から生まれたのに、出生届けが受理されず、戸籍がないため無国籍の状態にある人が存在する。これらは国際的な問題で、無国籍をなくそうという努力が国際的にされている。
国籍があるためには、国家が存在し、その国家の法律によって国籍が付与される、という条件が必要だ。だから、国籍が与えられなかった場合、国家が存在しない場所で生まれ育ったか、帰属していた国家が消失してしまった、などという場合が考えられる。2004年の映画『ターミナル』では、主人公の帰属する国家がクーデターで消滅し、アメリカに入国できず、空港のターミナル内での生活を余儀なくされたが、これなどが一例として考えられる。
また、国家が存在しているにも関わらず、その国家の法律によって、国籍の付与が成されない場合がある。日本で話題になった例は、夫の暴力の為家出した妻が子を産み、出生届けを出そうとしたが、失踪者扱いになっているため届け出を受理されず、子供が無戸籍となってしまった例などがある。法的には無戸籍であっても、日本国籍は存在するのだけれど、パスポートも作れないし、就学の通知も来ない、選挙権も停止される。この様に事実上は日本国民の扱いを受けないから、無国籍の状態と同じになってしまう。またラトビアという国はソビエト連邦から独立した歴史的過程で、国内在住のロシア人など約35万人が未だ無国籍でいる。
調べてみると、無国籍というのは世界的な問題で、かつ日本でも存在するのである。では、国籍の前提となる国家とはいったいどういうものなのだろうか。
国家の三要素というものがある。この三つが揃わない限り、国家は存在しない。それは、領域、人民、権力ないしは主権の三つ。領域、人民というのは大変わかりやすいが、権力というのはわかりにくいかも知れない。権力はおおざっぱに言えば、正統な統治機構、政府だ。だから国家は、権力が領域と人民を内外の干渉を許さず統治する存在と定義されている。
国際的には、この三要素を他国が承認して初めて国家として認識される。これもややこしい。例えば、ある国が独立したとする。それを他国家が承認すると、それを承認した国々では、その国は国として認められる。しかし、承認していない国では、国家として認められないから、承認していない国では、その国民の国籍も存在しない。例えば、日本は台湾を国家として承認していないから、日本国内において台湾国籍は存在しない。
日本の様に長い歴史を持つ国は、国家が悠久に続くという認識を持ちやすいが、大陸の小国などは、国家の存在は実にあやふやなものと言わざるを得ない。そして国籍があるということも、実はあやふやな地位なのだろう。
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