2011年9月28日水曜日

2011年複国籍容認を求める請願署名集約終了に伴う経過報告と御礼、今後についての協力依頼

日頃、複国籍PTによる複国籍容認を求める運動にご理解とご協力ありがとうございます。

複国籍PTは毎年複国籍容認の請願署名を提出するとともに、政府・国会における陳情活動を続けています。署名活動も10年目に達しました。その長さはある意味誇れるところではありますが、長きにわたっていること自体は喜ばしいことではありません。日本弁護士連合会の指摘通り、複数国籍の容認は人権救済にかかわる問題でもあり、いち早い法改正が求まれます。

複国籍PTは延べ数にすれば、これまでに数万筆の署名を集め、これを国会に送り続けて来ました。また、政府・国会における陳情活動においては、参議院議長陳情、法務大臣陳情、法務省政務官陳情、民主党幹事長室陳情などを重ねて参りました。

民主党政権の現在にあっては、民主党が政策として複数国籍の容認を掲げていることもあって、民主党各議員に関して言えば、この法改正に概ね理解を示しているといえます。しかし法務省から現実的な法改正案が出たことも、内閣からそれが提出されたこともありません。まるで民主党の政策が官僚の抵抗にあって実現化出来ていない悪しき一例のようにも映ります。

黒岩法務省政務官によれば、「複数国籍を容認しない現在の国籍制度によって、不都合を被っている人がいることは承知している。しかし、これの法改正までにはもう少し国民の意見の高まりが必要。」とのことです。これが法務省の抵抗も踏まえた、民主党政権の現状判断だと考えます。

政権が民主党に移っても、法務省の慎重姿勢を崩すことは容易ではないようです。しかしながら、私たちの今までの請願署名および陳情活動が無駄であったかというと、そうではありません。法務省は法改正までは行わないにしても、複数国籍者を規制するような運用を事実上放棄しています。これは我々の活動の成果であるといえます。

複数国籍者から確実に日本国籍をはく奪させる法務大臣による催告は今まで出されたことはありませんし、千葉元法務大臣によればこの法運用を法務省が行うつもりはないとのことです。また外国における日本大使館や領事館に対して、複数国籍者の規制を強めるような通達が法務省より発せられたといったことも聞きません。

複国籍PTが請願活動を始めた頃には、例えばタイの在外公館で日本の国籍選択を行った人が、大使館員から「あなたはこれから日本人だけになったのだから、一切のタイ人の行為をしてはいけません。」などと言われたことがあったわけですが、その頃に比べれば状況は大変好転しています。

こうした状況を得ることができたのは、請願署名や陳情活動があってのことです。何もしてこなければ、状況は全く変わらなかったに違いありません。こうした声があがり日本弁護士連合会もその声に呼応して、日本政府に対し複数国籍を容認するよう求める意見書を出しました。法律の専門家達から、日本はもう複数国籍の容認に向かうべきとの意見が出たのです。良識を持った世論が複数国籍の容認を支持したのです。

一部に法改正を求める声をあげると、政府がかえって規制を強化するのではないかと危惧する意見もありますが、タイの例などを見れば、声をあげなければ、かえって規制がひどいことになるのが明らかです。また、この声は上げ続けなければなりません。もし声が途絶えれば、規制緩和の流れが止まるか、あるいは逆流を始める可能性もあるのです。

お隣の韓国でも複数国籍は容認されました。以前に在日問題など日本の特殊事情を理由に複数国籍の容認は難しいという意見もありました。しかし、その当事者である一方の韓国が複国籍を容認しています。欧州、北米、中南米、アジアの国々でも複数国籍は容認されています。東アジアにおいて複数国籍が容認されていないのは、中国と日本くらいのものではないでしょうか。

人権に関して数々の問題を抱える中国と、日本の人権保護のレベルは同程度なのでしょうか。国際化度においては韓国より劣っているのでしょうか。経済的な裕福度はあるにしても、社会の体制が貧しく、力の弱い者が犠牲を強いられる国、そんな日本がちらつきます。また原発事故後の福島の惨状を見るにつけ、そんな日本が顕在化しているように思われてなりません。

2011年における複国籍PTの署名集約は終了いたしました。署名協力をして下さった方々には、深くお礼を申し上げます。最終集計はまだですが、残念ながら署名集約数は1000筆弱となると予測されます。これは恐らく毎年署名をしているのに進展がない、日本は変わらない、といった諦観が原因ではないかと思われます。

しかし、先ほども申し上げた通り、進展がないのではありません。声が上がる限り、状況はたとえゆっくりでも好転していくのです。この声を止めてはいけません。声を止めることは、日本という国が遅れているのと同じく、自分たち自身も遅れていることの証明となります。少なくとも歩みをとめた分だけは確実に遅れていきます。社会体制の貧しい日本の遅れに片棒を担ぎます。

複国籍PTは来年も署名集約を行います。陳情活動も続けます。劇的な進展は期待できないかもしれません。しかし状況を好転させる素地を作り続け、未来につなげなければなりません。日本はいやがおうにも国際化していきます。世界に自分の将来を求める人々は増え続ける一方でしょう。自分たちのため、またそういう希望を持った人たちが少しでも世界で活躍しやすい下地を提供するためにも、複数国籍の容認を求める声を上げ続けなければなりません。是非とも今後ともこの運動に関するご理解とご協力のほどをお願いいたします。

昨年から今年にかけては、どちらかというと陳情活動に重きを置いて来ました。これは複国籍容認に理解を示す民主党政権に強く働きかけて、早く法改正を迫る目的でした。それが民主党幹事長室陳情などの活動でした。今後は少し方向転換し、広く支持の声を集めることに重点を置きたいと思います。なぜなら、政府の見解として、法改正までにはもう少し国民の意見が高まる必要があるからです。しかし複国籍PT単独での請願署名や陳情活動では国民の意見の高まりと受け止められることは難しいと思います。多くの人や団体に複国籍容認の支持、表明をしてもらわなければなりません。そうしたネットワークの深まりが必要とされています。

どうか一人でも多くの方、団体からの支持とその表明をお願いいたします。また、それを複国籍PTへお知らせください。この文書は転載自由です。どうか沢山の方、団体へ転送してください。

複国籍PT 代表 高川 憲之
2011年9月27日