2010年11月18日木曜日

民主党幹事長室団体要望報告書抜粋

団体要望報告書

平成22年10月23日
団体名 複国籍PT
役員構成 代表:高川憲之、副代表:鍵谷智・仲晃生
紹介元 衆議院議員 土肥隆一
要請先省庁 法務省

要望内容:

1.最重要点として、形骸化した国籍選択制度の即時の廃止。

2.菅総理も書かれている(2004年9月6日)、他国との複数国籍を認める要件の早急な
緩和。例)日本と国交のある国で、一方の国が複国籍を容認している場合、日本もそれ
の申請によって容認する(相互主義)。

3.日本弁護士連合会が人権救済の観点から意見書を公表し(2008年11月19日)、提言
している、「国籍留保制度、自ら他の国籍を取得した場合の国籍喪失制度について、
複数国籍保持を容認する方向での国籍制度の改正。」
例)欧米諸国で採られている一般的な複数国籍容認の法制度、あるいはそれに近いもの。

要望説明:

国籍選択制度の廃止、複数国籍の容認の請願は2001年に最初に提出されました。複国籍PTにおいても、2002年より毎年、複数国籍の容認を求める請願を提出しております。当請願団体の請願は、2002年より一貫して、民主党国会議員の先生方から国会に提出されました。複国籍関連請願を紹介して下さった先生方は約80名に上ります。その中には先の首相、鳩山由起夫先生もおられます。

2002年には、大出彰元衆議院議員が憲法調査会で複国籍の質疑を初めてされ、続いて2003年千葉景子前参議院議員が法務委員会で質疑をされました。2003年には「国会図書館発行 レファレンス短報 重国籍-我が国の法制と各国の動向」が発行され、現在の国籍制度は見直しの時期に来ているとの指摘がされています。

2004年には前例のない、衆議院法務委員会の欧州法制度視察団と複国籍容認を求める陳情者団体との懇談会がパリで行われました。これは民主党、佐々木秀典、山内おさむ両元議員のご尽力によるものでした。複国籍PTはこの年、民主党の法務部門会議に出席し、複数国籍の容認を求める説明を致しました。この席では中井洽議員が民主党でプロジェクトチームを作り複数国籍容認を法制化する方向で検討すべきだと発言されています。その後、松野信夫現参議院議員、藤田一枝衆議院議員が国会質疑を行って下さっています。

2007年に岩國前衆議院議員は、私どもの陳情に合わせて、決算行政監視委員会で国会質疑をされ、それを傍聴させて下さいました。2008年には当時の江田五月参議院議長への議長陳情、2009年には当時の千葉景子法務大臣への大臣陳情もお受け頂きました。江田前参議院議長へ議長陳情の際には、ツルネン・マルティ参議院議員のご同行を頂いております。

菅総理大臣は2004年9月6日にご自身のブログで、世界中で日本人が仕事をし、生活しており、国際結婚も増えている中では、日本と他国の2重国籍を認める要件は緩和されるべきだ。私としても検討して見たい。と書かれています。

民主党は、常に当請願団体の活動にご理解下さっておりますが、残念ながら、未だ法改正に至っておりません。法改正に必要な検討チームも政権党になってから、未だ民主党に存在していないと藤田一枝議員から聞き及んでいます。初請願から9年が経ち、民主党は政権与党となりました。当団体としても大変喜ばしい限りですが、複国籍の容認は人権救済につながる待ったなしの問題です。民主党歴代首相も容認すべきとの認識でいる、この課題を是非とも早急に取り組んで頂きたく、そして早急な法改正をして頂きたく、ここにお願い致します。

日本弁護士連合会の意見書(2008年11月19日)の要旨は以下の通りとなっています。

1.異なる国籍の両親から生まれた複数国籍者や、外国籍者との婚姻等に際して自動的に複数国籍者となった者については国籍選択義務の適用がないように国籍法を改正すべきである。
2.国籍法が改正されるまで、同法15条1項に基づく国籍選択の催告をしない運用を維持されたい。
3.国籍留保制度、自ら他の国籍を取得した場合の国籍喪失制度についても、複数国籍保持を容認する方向での国籍制度を検討すべきである。

日本弁護士連合会の公表によれば、この意見書は民主党にも提出されていますが、この提言は人権救済の観点から出されたもので、日本の国籍制度によって、国籍選択を迫られている日本人や日本国外で暮らす日本人の人権が保護されない、そういう問題点を一つとして指摘しています。人権救済は早急になされるべきで、いつまでも放置すべきではありません。

日本政府が指摘している複数国籍によるデメリットは、主に法制度の抵触、忠誠の衝突、外交保護権の衝突、兵役、参政権の問題があります。これは日本弁護士連合会も指摘していますが、過去に複数国籍の容認国で問題になった例がありません。全ての問題が調整可能ということです。また、日本でも22歳まで複数国籍が実質容認されており、約60万人の複数国籍者がいますが、法制度の調整もなしに、問題となった例がありません。

複数国籍のメリットは、国際的に活動する人や国際結婚家族の生活や人権を保障し、豊かな社会構築に寄与する事にあります。欧米ではこの家族の生活権の尊重から、複数国籍の容認が潮流となりました。また、藤田一枝衆議院議員が国会で指摘されましたが、大局的にも(先のノーベル賞受賞などでも指摘された通り)、人的資源の確保に寄与します。国際的信頼、戦争抑止、外交上の影響力にも寄与します。

国際情勢が変化した現代では、複数国籍はデメリットであるとは考えられておらず、むしろ国際社会の中でメリットの多いものとなっています。複国籍を制限して行く方向にある国は皆無です。逆に年々複国籍の容認国が増えています。最近ではお隣の韓国が容認国となりました。ヨーロッパでは非常に制限的だったルクセンブルクが完全な容認国に移行しました。

韓国などは、こうした複国籍のメリットに敏感に反応して、そのメリットを求めたものと思います。日本は、石橋を叩いて渡る性格が災いして、ここにおいて世界の潮流から取り残されています。これでは日本の真の国際化は遅れる一方です。複数国籍者は、文化、社会、政治の場面で大変貴重な橋渡しをする、それぞれの国の重要な人材となります。

複数国籍を容認する国は、欧米では全ての国がそうなっています。ドイツは制限的ですが、実際には特例申請によって半数以上が複数国籍の維持を認可されています。今や先進国で、複国籍を頑なに認めない国は日本だけです。アジアにおいても、インドネシア、フィリピン、そして韓国と、複国籍は容認の潮流を見せています。

日本の現行法制度の中でも問題があります。松野衆議院議員も、国会質疑で指摘されていますが、
・現行の国籍法は、事実上複国籍を容認する者を作っており、不平等を生んでいます。
・国籍選択制度は形骸化しています。

今や法務省の把握する人数だけで、約60万人以上の複国籍者がいますが、約9割の複国籍者が国籍選択をしていません。この数は年々増加の一途を辿ります。また、自己の意志で他国の国籍を取得し、国籍法上日本国籍を喪失していても、国籍喪失届を出さず、日本国籍を維持している人が相当数存在しています。

日本弁護士連合会も指摘していますが、政府はこうした事態に今まで何らの対処もして来ませんでしたし、国による強制的な国籍喪失は重大な事態を招くため、慎重である姿勢を崩していません。この法制度は形骸化しており、法律的な合理性を失っております。

現時点の世界の流れや、日本政府もが実態として複数国籍の排除のためにこだわっているとは考えられないことに照らせば、現行国籍制度の維持を正当化する理由はもはや存在していません。

国籍法の改正に当たっては、一部のネット右翼と称される、特に中国・朝鮮を差別する集団から激しい反対が予想されます。しかし、この反対は特定外国人への差別感情から起こるもので、多くの国民は冷ややかでいます。そうした外国人差別の助長は、日本の国際化への障害になるばかりか、治安悪化の一因ともなります。

是非とも、民主党はそうした集団から毅然とした立場にいてもらいたいと要望します。前回の国籍法改正においても、この偏った右翼の集団から激しい反対がありました。しかし法改正は、それは社会が正しい方向に進む道標となりました。複国籍の容認は、まさにそれと同じです。

民主党幹事長室団体要望並びに法務省政務官陳情の報告

写真:法務省政務官室にて、左より、ヘアリチュケ、鍵谷、高川、黒岩法務政務官
 
民主党幹事長室団体要望並びに法務省政務官陳情の報告

複国籍PT 代表 高川 憲之

平成22年11月9日、複数国籍を容認する法改正を求める要望を要望団体、複国籍PTとして、民主党幹事長室に行いました。この団体要望に際し、複国籍PTからは代表 高川憲之、副代表 鍵谷智、会員 ヘアリチュケ薫の3名が参加しました。

民主党幹事長室の担当者は、企業団体委員長代理 柚木道義衆議院議員、陳情要請対応本部副本部長 津村啓介衆議院議員でした。民主党からは、この団体要望を民主党幹事長室にあげて下さった、土肥隆一衆議院議員並びに土肥隆一事務所野村秘書が同席されました。

民主党幹事長室団体要望は国会議事堂内にある第15会議室にて、午後1時より行われました。この幹事長室要望は、政権与党である民主党の政策に影響を与えるもので、なおかつ要望団体には、民主党としてその要望内容にどう対応していくかが明確になるものと聞いており、当要望団体としても、大変重要なものと受け止めていました。

要望内容については、事前に文書で報告しており、今回の団体要望はさらに幹事長室に対して当事者団体の直接的な訴えかけを聞いてもらうというものでした。当然、文書だけで要望を行うより、訴求力が高まります。また、この団体要望会談が実現されるということは、民主党としても重要度の高いものという認識があっての事と考えています。

会談冒頭、柚木議員より、弊団体の要望については以前から知っていたこと、これが民主党の政策事項にも挙がっており、今後対応して行かなければならないことである、という認識を示されました。しかし、直ぐにという運びには至っていないことも説明されました。

これは、従来からの民主党の姿勢です。民主党は以前より、複国籍の容認に肯定的であるけれど、具体的な法改正に向けた動きを与党として示していません。そこで、弊会としては日本弁護士連合会の提言を例にして、国籍選択制度などは人権侵害が危惧される問題で、いつまでも放置できるものではない、しかもこの制度は形骸化しており、合理的な法根拠も失っていることを強調しました。

「複国籍の容認には、いくつかのレベルがあり、日本は現在これについて極めて不寛容な制度を持っている。先進国では日本だけが不寛容な制度を貫いており、アジアに目を移しても、インド、インドネシア、フィリピン、そして本年に入って韓国が容認国に転じた。日本は国際的な潮流に乗り遅れている。もう検討を行っている場合ではなく、出来るところ、例えば国籍選択制度の廃止などから即時に着手してもらいたい。」

「また成人の複国籍容認においても、例えば複国籍を容認している国との相互主義による複国籍を容認するなど、先進国において閉鎖的な国籍制度を持つドイツに並ぶ程度にまで、複数国籍の容認条件を緩和してもらいたい。複国籍を容認した国家で、今まで社会問題が発生した例もなく、日本においても現在60万人以上の複国籍者がいるにも関わらず、それによる社会問題が発生している例もない。」

「一方、複国籍の容認は国際結婚家族や生まれながらの複国籍者にとって大変な助けになる。少子化社会にとって、人材確保にも寄与し、外国人の社会統合への一助ともなる。」以上の様な説得を、要望説明書に沿って担当者に対して直接行いました。

津村議員からは、外国人参政権と複国籍容認の関係について質問がありました。両者はどのような関係があるのか、例えば複国籍が容認されると、特別永住者がどれだけ日本に帰化すると考えているか、といった質問がありました。

この質問に対しては、代表高川の個人的な見解として回答しました。「外国人参政権と複国籍容認は外国人に対する人権擁護において、補完的な関係にある。外国人の人権は制限されており、様々なレベルがあって、これを一つの政策で解決することは出来ない。いくつかの政策が、その様々なレベルに対応するように取られるのが望ましい。両者はそうした関係にある。」

「国籍には個人の側からみると、アイデンティティに関わる側面を持つ。外国人永住者の中には、一つの国籍を基にしたアイデンティティを望む者もいる。すなわち、在日外国人の全てが日本国籍を望むものではなく、特別永住者の中にあっても、自己の国籍のあり方には様々な受け止め方が存在している。日本国籍の取得を望まない人も当然いる。弊会と特別永住者関連団体には交流がない。これは、複国籍の容認が直接的に全ての特別永住者への利益につながるものではないことが、一因になっていると思われる。」

「しかし、在日2世、3世と言われる方々には、例えば日本国籍を維持したまま、韓国籍を再取得したい、あるいはその逆で韓国籍を維持したまま、日本国籍を取得したい、という人もいる。特別永住者の子孫が日本に定住し、両国の絆を大切にしている表れだ。複国籍が容認され、具体的に何人程度の特別永住者が日本国籍を取得するのかは、私たちには推測出来ないけれど、必要とする人々にとっては切実な問題であることは理解して頂きたい。」

「国籍法の改正は、前回と同様にヒステリックな反対が予想されるけれど、現行の国籍制度で生活に制限を受けている人、苦しんでいる人がいる以上、早急に毅然とした態度で複国籍を容認する法改正を行ってもらいたい。また、外国人参政権が先で、複国籍の容認はその次といった受け止め方があるのなら、見直してもらいたい。何故なら、複国籍の容認は人権侵害の解消という火急な事案でもあるからだ。」

以上の様な要望・説得を行いました。これを受けて幹事長室の担当からは、外国人参政権が先、といった順番があるわけでなく、それぞれが同じく重要な課題であると受け止めている。複国籍の容認に対する要望はよくわかったので、民主党内でも努力して行きたい、といったコメントを頂きました。

最後に高川の方から、努力して頂けるのは大変有難いのですが、もう実際に動くという態勢でお願いします、と念を押しました。


民主党幹事長室との団体要望の後、土肥事務所のお計らいで、この法改正の担当省庁である法務省へ陳情に向かいました。当初は民事局担当者に対する陳情の予定でしたが、黒岩たかひろ法務政務官が特別に時間を割いて下さり、政務官陳情を受けて下さる事となりました。政務官は、大臣、副大臣に続く地位にある人です。

複国籍PTの法務省陳情は2回目で、1度目は千葉景子前法務大臣への大臣陳情でした。今回は政務官ですが、政務官は実務において大きな権限があると聞いていますので、法務省への働きかけとしては大変重要なものと受け止めています。政府高官に陳情しようとしても、なかなか出来るものではないので、この機会を設けて下さったことに関しては大変感謝しています。

黒岩政務官との会談は法務省の政務官室で行われました。民事局の担当者も同席されていました。これは緊張しますが、陳情における最高の機会であったと思います。

冒頭、黒岩政務官が、「民主党が政権与党になり、請願の紹介が出来なくなって申し訳なく思っている。しかし、重要な問題であることは認識している」と述べられました。「ただ、法改正に至るまでには、もう少し世論の熟成が必要ではないか」、との認識も示されました。法改正を求める声がまだ小さい、と受け止めているようです。政務官としての立場からの発言なので、法務省民事局の見解でもあると推測しました。

そこで複国籍PTとして、政務官の見解と、私どもの見解では少なからず違いがある事を訴えました。その概略は以下の通りです。

「2001年より法改正を求める請願を毎年提出しており、請願紹介議員も約80名になっている。民主党歴代の総理大臣も、過去複国籍の容認には賛成の立場にいた。しかし、法務省民事局の国会答弁は常に、国民的な議論の深まりを注視したいという立場に留まったままだ。」

「2007年には、岩國前衆議院議員が複国籍PTの陳情に合わせて、国会質疑をし、それを弊会代表高川に傍聴させてくれた。その中で、もう日本の社会は複国籍を受け入れる素地が十分に出来ている、熟成した社会にあると述べられた。国会質疑は、国民的な議論の代表だ。自民党からも容認の声が上がっている。河野太郎議員は自民党の国籍PTの座長として、複国籍を容認する座長試案を発表した。」

「2008年には日本弁護士連合会が複数国籍の容認に関する提言書を公表している。ノーベル賞学者である江崎博士も、日本の科学発展の為には、複国籍が認められるべきという立場にいる。この様に各界から声は十分に上がって来ている。」

「実際に複国籍者から窮状を求める様な声が上がらないのは、政府が国籍選択制度を形骸化させ、実質複国籍を容認しているからだ。もし、日本政府が国籍を選択しない者から日本国籍を強制的に喪失させたら、日本弁護士連合会も指摘しているが、人権侵害の問題を引き起こす。しかし、いつまでも法制度を形骸化させていいものではない。」

「また、日本国民で外国籍を取得したい者は、海外在住者に多い。生活拠点が海外にある者にとって、日本の政治の場に声を届けることは大変難しい。その苦労なども、なかなか日本の社会には伝わらない。しかし、在外邦人の親睦団体から、複国籍の容認を求める声も上がっている。特にフランス、スイス、イタリア、アメリカ、オーストラリアなど、欧米の在外邦人団体から声が上がっている。」

「アジアの他の国々、例えば韓国が複国籍容認に転じたことなども踏まえ、日本も早急に法改正をお願いしたい。」

黒岩政務官には関連資料のコピーをお渡しし、一読してもらい、法務省の立場の再考をお願いしました。会談の写真で、書類を手渡しているのは、その陳情用資料です。わざわざ、黒岩政務官がその様な形での写真撮影を提案して下さったので、これは陳情を真摯に受け止めました、という意思の表れであったものと受け止めています。

以上、民主党幹事長室団体要望、法務省政務官陳情とも、雰囲気的には賛同を頂けたものであったように思いますが、昨年は法務大臣陳情までしても、実質的な動きが見られなかったことを考えると、全く楽観は許されません。引き続き、要望や陳情、請願などを行って、働きかけを行う必要があると考えます。

2010年10月31日日曜日

請願書提出先変更について

土肥衆議院議員事務所から、請願書を提出できない旨連絡がありました。
理由は、土肥議員が政治倫理委員会の委員長になり、職務上請願の紹介をすることが出来ないからという事です。

大変残念ですが、民主党から請願書を提出する事は極めて困難となりました。
民主党が政権党であり続ける限り、請願書を民主党の議員から提出してもらう事は諦めざるを得ません。民主党の中にも政府の役職にない議員もいますから、そういう議員を通じて請願を提出する事は可能だと思いますが、その議員がいつまで請願紹介出来るかもわかりません。


土肥議員も推薦されていましたが、今後民主党に対しては、党への要望書として訴えて行きたいと思います。そうした場合、従来の署名集約に加えて、民主党や民主党議員への陳情を強めて行く必要が生じます。

今後請願は社民党の議員から提出してもらうつもりです。民主党藤田衆議院議員も、社民党なら請願を紹介してくれるので は、と仰っていましたから、この件で民主党が不快に思う事はないと考えます。

とりあえず、土肥議員にお渡しした請願書は引き取って、その足で社民党の阿部知子衆議院議員事務所に提出しました。今回阿部議員が急なお願いな所をなんとか引き 受けて下さって大変有難く思っております。阿部議員事務所とは、今後良好な関係を保って行きたい考えています。

陳情に際して

衆議院 藤田議員への陳情の際、自己の志望による外国籍取得に際する日本国籍喪失の形骸化について、是非法務省に質問してもらいたい旨、申し出ました。

実際、外国籍取得によっても、日本のパスポートを維持している人は多くいます。これは、正直に国籍喪失届を提出して、日本国籍を喪失する人との不公平を生んでいます。自民党、河野議員は正直者がばかを見る状況になっていると述べられています。

藤田議員は、政府に問い合わせて、何らかの返答をして下さるとのことです。藤田議員は、敢えて問題を顕在化させると、法務省の対応を硬化させる場合もあるとの懸念も示されていましたが、国籍選択制度の形骸化がもう不可逆的であるのと同様に、外国籍取得による国籍喪失既定の形骸化も不可逆的であり、むしろ法務省の放置・隠蔽が問題であると応えました。

質問事項は以下の通りです。


1.他国籍を取得しても、国籍喪失の事実を知らなければ、国籍喪失届を出す必要はないのではないか。すなわち、国籍喪失の事実を知らなければ、実質的に複数国籍は法律上も維持出来る事になるのではないか。

2.公館庁が国籍喪失の事実を知った時、国籍喪失の報告をしなければならない、とあるが、その報告によって国籍喪失が行われるのか。それはどういう手続きになるのか。手続きはどの様な法令、あるいは通達によって行われるのか。今までその手続きによって、何人が国籍喪失をさせられているのか。


関係法令抜粋

国籍法

(国籍の喪失)
第十一条  日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
2  外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。

戸籍法

第百三条  国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知つた日から一箇月以内(届出をすべき者がその事実を知つた日に国外に在るときは、その日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
2  届書には、次の事項を記載し、国籍喪失を証すべき書面を添付しなければならない。
一  国籍喪失の原因及び年月日
二  新たに外国の国籍を取得したときは、その国籍

第百五条  官庁又は公署がその職務上国籍を喪失した者があることを知つたときは、遅滞なく本籍地の市町村長に、国籍喪失を証すべき書面を添附して、国籍喪失の報告をしなければならない。
2  報告書には、第百三条第二項に掲げる事項を記載しなければならない。

法務省の指示(Mixiの書き込みより抜粋)

私は領事部のことは詳しくはないのですが、間接的に知りえた事実からすると、外務省は在外公館の領事部に対して、重国籍者、特に「自らの意思で多国籍を取得した」と疑われる日本人に対して、日本国籍の放棄を求めるよう指導するようにとの指示を出していると思います。それをどこまで徹底的に行うのかは、在外公館の事情や、その担当官によって対応が異なっているようですが、基本的にはそういう方針のようです。

2010年国会陳情報告及び請願提出報告

2010年10月22日
国会に複国籍の容認を求める陳情と請願書の提出並びに、J-Visの廃止を求める陳情と請願書の提出に行きました。

複国籍の容認を求める陳情の要旨は以下の通りです。

・複国籍の容認を求める請願は2000年よりはじまり、今年で10年を迎えました。毎年請願が出されていますが、一向に法案すら提出されません。民主党政権になっても、動きがありません。是非、何らかの一歩、請願の承認など、をお願い致します。

・韓国も複国籍を容認する法改正を行いました。日本は国際化の波に遅れています。

・菅首相も以前、複国籍を認める要件は緩和されるべき、と述べられています。せめて、国籍選択制度の見直しを、内閣が法務省に求めて下さい。現法制度は形骸化しています。

・成人の複国籍者は増加の一方で、他国籍取得による、日本国籍の喪失規定も形骸化しています。強制的に日本国籍を喪失されれば、そうならなかった多くの人達と不公平が生じます。

J-Visの廃止を求める陳情は、一刻も早い外国人の入国審査に際する指紋押捺と写真撮影の廃止をお願い致しました。

本日陳情を受けて下さった議員は、
衆議院 土肥隆一議員
同      藤田一枝議員

のお二方です。

ツルネン・マルティ議員とは、時間が取れず、議員会館ロビーでご挨拶をした程度でした。

参議院では、社民党党首 福島みずほ議員の事務所を訪問し、秘書対応をして頂きました。

請願書の提出は、衆議院では土肥議員が、参議院では福島議員がお受け下さる事になりました。現在、民主党では請願の受け付けが制限されているとの事です。衆議院では、政府の役職を持つ議員には請願の紹介を遠慮するようにと党からの通達が出ています。参議院ではさらに厳しく、全ての参議院議員に請願紹介の自粛が党より通達されています。

この様な状況の為、今まで紹介議員になって下さっていた民主党議員の方々から軒並み請願の紹介を断られています。その中で、土肥議員が衆議院に請願を紹介して下さるのは大変有難い事でした。参議院では社民党党首福島みずほ議員が紹介議員を受けて下さいました。今後、請願に関しては福島議員にお世話になる事が多くなると思います。

土肥議員からは、民主党幹事長室への要望書提出を勧められました。幹事長室への要望書は、政権与党たる民主党への正式な要望として扱われるそうで、請願より効果が期待できるだろうということでした。よって、至急要望書を作成して、土肥議員を通じて民主党へ提出したいと思います。場合によっては、幹事長室担当議員に直接面談も可能との事で、これも合わせて申し込みたいと思います。

請願は、臨時国会と通常国会にわけて提出するため、今回提出した請願の筆数は以下の通りとなっています。

衆議院 紹介議員 土肥隆一議員 :複国籍 417筆、J-Vis 334筆
参議院 紹介議員 福島みずほ議員:複国籍 415筆 J-Vis 474筆

合計               複国籍 832筆 J-Vis 808筆

複国籍PT 代表 高川 憲之

写真(平成22年10月22日撮影)
土肥隆一衆議院議員(右)と複国籍PT代表高川(左)

藤田一枝衆議院議員(右)と複国籍PT代表高川(左)

2010年署名集約報告

複国籍PT 代表 高川 憲之

複国籍PTでは2001年より、日本が複数国籍を容認する国籍法改正を求める請願を、日本の国会に毎年提出しています。2010年の署名集約は、1401筆(内訳、日本送付分994筆、スイス送付分407筆)となりました。皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。この署名は、国会請願として衆議院、参議院に提出されます。

現政権の民主党は複国籍の容認に野党時代より理解を示して下さっている政党で、数多くの議員の方々が国籍法改正に向けて努力して下さっておりますが、残念ながら法案提出まで至っておりません。理想的な進め方としては、閣法として提出し、民主党の党議拘束のもとでの改正されることです。

菅総理大臣は、過去に複国籍の容認に肯定的な発言を行っており、請願や陳情を通して、積極的に訴えて行きたいと思っております。皆様から頂いた署名は、国会請願としてその訴えを強力に後押ししてくれるものと信じております。

日本の複国籍容認の動きは遅々としていますが、隣国の韓国では国籍法が改正され、出生による複数国籍者の複数国籍の維持が認められました。優秀な外国人、成人前に外国人家庭に養子縁組された外国国籍者、外国に居住し満65歳以降に入国した高齢の在外同胞らに韓国籍を含む複数国籍が認められる様になりました。国際化社会に対応しつつある韓国と対照的に、閉鎖的で遅れた日本の姿がまた一段と浮き彫りになりました。

世界で活躍する日本人は増加の一方を辿っております。ノーベル賞学者である江崎博士も「複数国籍」の容認が必要と発言されております。出生による日本の複数国籍者も60万人以上と推計されています。日本弁護士連合会からも提言されています。日本の複国籍容認は急がれなければなりません。

2010年5月4日火曜日

米軍基地について思う事

JMMで知ったのだけれど、米軍基地の75%は沖縄県に集中している。しかも、岡本行夫氏(文芸春秋5月号)によると、沖縄の過重負担の原点は1972年の日本復帰にあるとの事。「そもそも1960年の日米安保体制は、沖縄とは無関係につくられた。したがって、日本本土を防衛する体制は、沖縄抜きで完結していた。そこに、米軍基地と兵員を満載した沖縄が返還された。日本の防衛に本土プラス沖縄の基地・兵力はいらないので、基地の削減が可能になった。そこで、本土は自分たちの周りの米軍基地から削減していった。沖縄返還後、本土の米軍基地が65%削減されたのに対し、沖縄は15%だけにとどまった。その結果、米軍基地の75%が沖縄に集中することになった」

今まで、知らなかった。そりゃ、沖縄の人達は怒るに決まってる。

米軍基地が来て欲しくない、とみんな思っている。しかし米軍基地はまだどこかに駐留して欲しい。鳩山政権も揺れているが、日本人が皆揺れているのではないかと思う。民主党の掲げた有事駐留(戦争が起きた時だけ駆けつけてくれればいい)を基に、なるべく基地を減らし、沖縄の負担を軽減して行かないといけないと思う。

首相は5月までに解決すると言うが、むしろ、これからやらなくちゃならないのは、政府が各県に候補地を指名し、負担をお願いすることだろう。すると、全県で反対運動が起こる。自分の身近に感じられて、初めてなんとかしなくちゃ、という雰囲気が生まれる。あと1-2年、大揺れに揺れてもいいように思った。

2010年3月18日木曜日

外国人地方参政権に関して

外国人地方参政権も何かと複数国籍の問題に絡んでくる、国際関係を背景とした人権問題である。私は地方参政権に関しては賛成の立場を取っている。それは世の中が国際化するにつれ、国家という枠では救え切れなくなった人権の空白を、複数の市民権のあり方を導入することによって、解消していこうという歩みだからだ。例えば、EU諸国では、出身国の市民権とEU市民権が存在しているし、このEUの個別国家を見て行くと、永住市民権も発達してきている。

こうした複数市民権の発展は、複数国籍の容認と言う事と無関係ではなく、そもそも複数国籍の容認自体が複数市民権の許容の結果と言える。

人の活動はえてして国家の境を超える。しかし国家は国家内の人権などについて整備を行うものの、その枠を超える整備についてはなかなか対処できないのが現状である。個人はそうした国家の限界によって、様々な人権の空白による侵害に苛まれるのである。

永住市民権、EU市民権、複国籍容認などは欧米の先進国が実現している、こうした国際化する社会においての人権の整備であるが、日本はまだまだ後塵を拝している。

ここでは、特に日本の永住者等の地方参政権について扱ってみたい。

2010年1月20日水曜日

日本版US-Visit法の廃止を求めるコメントをどうぞ

こちらのトピックに日本版US-Visit法の廃止を求めるコメントをお願い致します。

複国籍の容認を求めるコメントをどうぞ

こちらのトピックにどうぞコメントをお願い致します

2010年1月19日火曜日

複国籍PTのリンクに


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日本弁護士連合会も提言!

日本弁護士連合会も提言しています!

(日本弁護士連合会ホームページより抜粋)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/081119_3.html


異なる国籍の両親から生まれた複数国籍者や、外国籍者との婚姻等に際して自動的に複数国籍者となった者については国籍選択義務の適用がないように国籍法を改正すべきである。

国籍法が改正されるまで、同法15条1項に基づく国籍選択の催告をしない運用を維持されたい。

国籍留保制度、自ら他の国籍を取得した場合の国籍喪失制度についても、複数国籍保持を容認する方向での国籍制度を検討すべきである。

―複国籍の容認は私的な要望に過ぎないという意見に対して―

複国籍の容認は公益に関わるもので、速やかに進められるべきである

―複国籍の容認は私的な要望に過ぎないという意見に対して―

複国籍PT 代表 高川 憲之
2010年1月1日

複国籍の容認は、時々耳にする、自分勝手な要望というものでは全くない。この要望が国会請願としてある女性団体からも提出されていることなどを根拠に、女性差別的な観点も含めて、そう叫ばれているようであり、大変残念だ。複国籍の容認はもはや公益に関わるもので、個人の枠を超えて速やかに進められるべきである。特に、国民主権という立場から、国民が国際社会の中で十分活躍出来るよう、また国が国民や無国籍となった人々へ人権侵害を行わないよう配慮し、成人の複国籍容認を幅広く行う事が必要である。

この理由として、15の要点をまとめた。

1.単一国籍制度は破たんしており、出生による複国籍者だけでも60万人以上とみられている。

2.単一国籍制度は無国籍者を多数生んでおり、人権侵害を引き起こしている

3.単一国籍制度が欠陥を有しているという事は、世界的に認識されている。

4.複国籍に不容認な国は、政府によって国民から国籍を一方的に喪失させる側面を持ち、国民という国の資源を減らす。

5.単一国籍制度が破たんしているのに、法的整備を行わないのは遵法の精神を損ない、法治国家の根幹に関わる。

6.政府が一方的な国籍喪失を強行すれば、社会問題となる。

7.日本弁護士連合会も、国籍選択制度など、国が国籍を喪失させる制度は人権侵害につながるとしている。

8.政府が国籍喪失を強行せず、制度を形骸化(事実上の複国籍黙認)させることで社会問題化を抑えている反面、出生による数10万人規模の複国籍者に不安と混乱を与えている。

9.国外長期在留者は様々なハンデを乗り越えて生活基盤を築いている、その過程で居住国の国籍取得が要請される。しかし、日本の国籍制度はこれの障害となり、長期在留者の活動を制限している。海外在留者にとって日本国籍の放棄は様々な理由によって困難。

10.長期在留者の活動を制限することは、国際関係の深化も制限し、国にとっても不利益を招く。

11.複国籍は国際的に活躍する日本国民の活躍の場を広げる。ノーベル賞学者やオリンピック日本代表選手、芸術家、歌手など具体的な事例も多数ある。

12.日系移民は日本の貧しさが作り出した棄民であって、複国籍の容認を含めた彼らへの支援が必要。

13.海外へ活躍の場を求める日本国民の増加は、日本が国際化を求めた当然の帰結。自分勝手な道を歩んでいるという批判は当たらない。

14.日本国は国民を保護する義務があり、海外在留国民の利益も保護する義務がある。しかし、複国籍の不容認によって国民は不利益を被っている。

15.国が国民から国籍を喪失させる権力を有するのは国民主権に矛盾し、権力を背景とする官僚の国民支配の一因となる。

単一国籍主義にはある一国が単一国籍制度を取っても、単一国籍を個人に徹底出来ないという制度的な欠陥をもっている。その代表的な例が、出生による複国籍だ。両親が異なる国籍を有している場合、子はそれを引き継いで複国籍となる。日本はこれに国籍選択制度を課して、単一国籍を法制上維持しているが、すでに出生による複国籍者は60万人以上とみられ、事実上破たんしている。

単一国籍制度を持つ国には無国籍者が多数生じることも知られている。単一国籍を維持するため、国籍取得要件を厳しくする結果、日本で出生したり、生活するにも関わらず日本国籍が取得できず、無国籍となる人々が多数発生する。無国籍に関して言えば、これをあらゆる国家権力からの離脱という側面で、肯定的に考える向きもあるが、人権擁護の観点からすれば、著しい不利益となる。たとえば、日本の無国籍者が海外渡航する場合、大変な制限を被る。

この様に単一国籍制度が欠陥を有しているという事は、世界的に認識されていることで、欧州でも単一国籍主義を修正して複国籍容認へと向かっており、複国籍に不寛容なドイツにおいても、複国籍を成人後も認められるケースの方が多くなっている。

また、複国籍容認国と、複国籍不容認国との国籍を出生によって有した場合、政府によって国籍を喪失させられるのは複国籍不容認国からのみである。国力の源泉は国民にある。しかし、複国籍不容認国は国が一方的に国民を追い出す制度しか持たない。国民という国の資源を減らす側面を持つ単一国籍制度は公共の利益にも反する。

また単一国籍制度が制度として欠陥があり、現実的に破たんしている事自体、すでにこれは公共の問題と言わざるを得ない。法律が守られないのである。これは遵法の精神を損ない、法治国家の根幹に関わる。無論、単一国籍制度を徹底し、複国籍者から日本国籍を喪失させるという強制手段もあるが、一方の国籍国に生活基盤を持たない複国籍者から日本国籍を喪失させた場合、著しい社会問題になることは明白であり、ここにおいても公共の問題が発生する。

日本国内においては、日本国籍取得者が複国籍者であっても、その者は国から日本国民として扱われる。外国籍者としては扱われない。通常国籍を有する国民が参政権なども含めて、その国での権利を最も有利に行使できるのであるから、外国籍者として扱われない事に著しい不利益は生じない。外国に生活基盤を持つ複国籍者が日本に留学を希望し、日本政府の外国人留学制度を申請する場合、これを受けられないという不利益が指摘されているが、これに代替えとなる帰国子女受け入れ制度などもあり、その様な不利益には補完的な制度が用意されている。

日本国内において、複国籍の不容認が、例えば緊急の人権侵害上の問題にならない要因として、日本国内にあっては日本国民であることが、このように最も有利であり、他に選択肢もないことに起因する。日本弁護士連合会の提言において、国籍選択制度を廃止して、複国籍容認に日本は向かうべきとあるが、この文脈においても、日本国籍を喪失させる懸念の大変強い国籍選択制度は、日本国民であるという最も有利な権利を、国が喪失させるのは人権侵害につながるとの認識にある。それは確かに生命の存続に関わるほどの緊急度とは言い難い。

しかも、この国籍選択制度は徹底されておらず、複国籍者が国籍選択をしなくても、国籍喪失などの実質的な処分は今まで行われていない。また、現法務大臣の弁によれば、この処分はこれからも行われない。この様に国が法律を厳格に運用しないことによって、単一国籍制度がもたらす人権侵害は回避されており、社会的な問題にまで発展はしない。このような政府の姿勢による弊害は、単に制度の形骸化だけであり、今後この形骸化がさらに進んで行っても、この形骸化が緊急の社会問題として浮上することはなかなか考えにくい。しかし、60万人以上とみられる出生による複国籍者にとって不安と混乱を招くものであり、この数は年々増加を辿る。事実上の複国籍黙認はいずれ破たんする。

一方、100万人を超すといわれる海外在留日本人の中には、特に長期在留者を中心として、この複国籍容認問題は生活に直結する問題となる。日本と同様、生活国の国籍を有することは、その国での権利を最も有利に行使できるものであるからである。外国籍であるという事は、就職上、居住上、社会活動上の制限を受ける。

一般に外国での就業は言語、習慣等の違いにより困難を伴う。そうしたハンデを悪用した搾取にも遭遇しやすい。また地位が不安定で社会保障も限定的となることが多い。その反面、徴税のシステムはどの国でも整っており、居住国の国民と少なくとも同等の納税義務を負う。外国人労働者の社会統合という観点からも、長期滞在する場合、居住国の国籍取得が推奨される。外国人労働者が居住国で社会基盤を築きそれを固めれば固めるほど、居住国の国籍取得の要請が強まるのだ。

この様に、長期国外在留者は、多くの不利益を抱え込んで海外での生活を始め、それを克服しながら自己の生活基盤を築いていく。居住国の国籍取得はこの不利益の解消の一助となり、また長期滞在者に対して居住国もそれを推奨する。しかし、日本が成人の複国籍を認めないことから、日本国民の国外長期在留者は居住国の国籍取得が困難となっている。もし、居住国の国籍を取得したら、日本国籍を喪失してしまい、もはや日本国民ではなくなる。これは日本国民の国外活動の障害になっている。日本国籍は日本に帰国した際、あるいは日本に住む親類縁者とのつながりなどを考えると、自らが放棄出来るものではない。

国外での就職、居住、社会活動が外国籍の取得を認められないことで制限されたままとなることは、国民にとって直接的な不利益であるばかりでなく、国にとっても不利益を招く。国外在留の国民が居住国で築く基盤は、日本とその居住国とのつながりを深め、経済を含め国際関係の深まりの一助となる。そうした機会を日本が制限しているのだ。

国際企業で働く者、国外で日本からやってくる人々のために働くガイドや通訳、国外に日本文化を紹介する者、また国外で研究、芸術、芸能やスポーツを通じて活躍する人々にとって、複国籍の容認はより活躍の場を広げるものであり、日本と居住国の双方に利益をもたらす。

アメリカ国籍を取得し、研究活動を続け、ノーベル賞を取るまでに実績を積む研究者もいる。彼は日本国民ではない、しかしメディアは彼を日本人として扱う。そして彼にも日本人の精神が宿っている。彼が日本人として自然であるならば、法的な制度が日本国籍を喪失させる事自体に問題があるのは明白であって、これは彼個人の問題を超えて、公共の問題である。

最近ではフィギュアスケートのオリンピック日本代表選手で父親がアメリカ人の選手が出ている。母親が日本国民であるため、日本の国籍も受け継いで日本代表選手になった。こうした、有能な人物が幅広く国の代表として活躍出来るということは、無論有能な人物にとっても有益だが、国にも貢献することになる。この選手が将来成人を迎えて国籍選択を迫られるわけだが、場合によっては元日本国民が日本代表選手だった、ということになりかねない訳で、これは有能な人材の流出にもつながる。

日本国民が国外で活動する様になるのには様々な理由が存在する。過去において最も顕著であったのが、移民であって、これは国が先頭になって行った棄民であった。日本で生活苦にあえぐ人々を海外に追いやった。これらの人々の日本国籍の継承を最優先することは道義上の問題であって、かつ公共の問題だ。

近年においては、日本の国際化によって海外の活動の場を求める人も多い。こうした人々は勝手に日本を飛び出したと思われがちであるが、日本が国際化を求めた当然の帰結である。日本が義務教育によって英語を教え、国民が国際化することを奨励すれば、当然有能な人物を始め、様々な人々が海外に渡り、生活するようになる。こうした人々が、自分勝手な道を歩んでいるなどという批判に当たらないことは明白である。

日本国が国民を保護する義務を有し、その保護義務が海外在住の日本国民まで及ぶのであれば、海外在留国民の利益を保護していくのは、公共の問題である。それにも関らず、複国籍の不容認という制度を通じ、海外在留の日本国民に不利益を被らせているという現実がある以上、これは速やかに改められなければならない。

加えて、国が国民から国籍を喪失させる事が出来るという制度は、国民主権までも喪失させるという権力を国が有するということである。こうした権力を背景に官僚が国民を支配するという構図も成り立つのであるから、官僚主導の政治を改めるという観点からも、公益に関わるものと言えよう。

日本国憲法の前文

日本国憲法前文を読むと私たちの主張にこれが全く合致している事がわかる。 日本は国際社会の中で名誉ある地位を占めなくてはならない。偏狭な国粋主義に陥ってはならない。それはまさに自国の事のみに専念して他国を無視するようなものである。日本の今の複国籍に不寛容な政策は、海外で活躍する日本国民の福利を政府が一方的に制限している。また、排他的な外国人政策は、日本の名誉ある地位を貶めている。
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 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。(1946年11月3日公布)