2010年11月18日木曜日

民主党幹事長室団体要望並びに法務省政務官陳情の報告

写真:法務省政務官室にて、左より、ヘアリチュケ、鍵谷、高川、黒岩法務政務官
 
民主党幹事長室団体要望並びに法務省政務官陳情の報告

複国籍PT 代表 高川 憲之

平成22年11月9日、複数国籍を容認する法改正を求める要望を要望団体、複国籍PTとして、民主党幹事長室に行いました。この団体要望に際し、複国籍PTからは代表 高川憲之、副代表 鍵谷智、会員 ヘアリチュケ薫の3名が参加しました。

民主党幹事長室の担当者は、企業団体委員長代理 柚木道義衆議院議員、陳情要請対応本部副本部長 津村啓介衆議院議員でした。民主党からは、この団体要望を民主党幹事長室にあげて下さった、土肥隆一衆議院議員並びに土肥隆一事務所野村秘書が同席されました。

民主党幹事長室団体要望は国会議事堂内にある第15会議室にて、午後1時より行われました。この幹事長室要望は、政権与党である民主党の政策に影響を与えるもので、なおかつ要望団体には、民主党としてその要望内容にどう対応していくかが明確になるものと聞いており、当要望団体としても、大変重要なものと受け止めていました。

要望内容については、事前に文書で報告しており、今回の団体要望はさらに幹事長室に対して当事者団体の直接的な訴えかけを聞いてもらうというものでした。当然、文書だけで要望を行うより、訴求力が高まります。また、この団体要望会談が実現されるということは、民主党としても重要度の高いものという認識があっての事と考えています。

会談冒頭、柚木議員より、弊団体の要望については以前から知っていたこと、これが民主党の政策事項にも挙がっており、今後対応して行かなければならないことである、という認識を示されました。しかし、直ぐにという運びには至っていないことも説明されました。

これは、従来からの民主党の姿勢です。民主党は以前より、複国籍の容認に肯定的であるけれど、具体的な法改正に向けた動きを与党として示していません。そこで、弊会としては日本弁護士連合会の提言を例にして、国籍選択制度などは人権侵害が危惧される問題で、いつまでも放置できるものではない、しかもこの制度は形骸化しており、合理的な法根拠も失っていることを強調しました。

「複国籍の容認には、いくつかのレベルがあり、日本は現在これについて極めて不寛容な制度を持っている。先進国では日本だけが不寛容な制度を貫いており、アジアに目を移しても、インド、インドネシア、フィリピン、そして本年に入って韓国が容認国に転じた。日本は国際的な潮流に乗り遅れている。もう検討を行っている場合ではなく、出来るところ、例えば国籍選択制度の廃止などから即時に着手してもらいたい。」

「また成人の複国籍容認においても、例えば複国籍を容認している国との相互主義による複国籍を容認するなど、先進国において閉鎖的な国籍制度を持つドイツに並ぶ程度にまで、複数国籍の容認条件を緩和してもらいたい。複国籍を容認した国家で、今まで社会問題が発生した例もなく、日本においても現在60万人以上の複国籍者がいるにも関わらず、それによる社会問題が発生している例もない。」

「一方、複国籍の容認は国際結婚家族や生まれながらの複国籍者にとって大変な助けになる。少子化社会にとって、人材確保にも寄与し、外国人の社会統合への一助ともなる。」以上の様な説得を、要望説明書に沿って担当者に対して直接行いました。

津村議員からは、外国人参政権と複国籍容認の関係について質問がありました。両者はどのような関係があるのか、例えば複国籍が容認されると、特別永住者がどれだけ日本に帰化すると考えているか、といった質問がありました。

この質問に対しては、代表高川の個人的な見解として回答しました。「外国人参政権と複国籍容認は外国人に対する人権擁護において、補完的な関係にある。外国人の人権は制限されており、様々なレベルがあって、これを一つの政策で解決することは出来ない。いくつかの政策が、その様々なレベルに対応するように取られるのが望ましい。両者はそうした関係にある。」

「国籍には個人の側からみると、アイデンティティに関わる側面を持つ。外国人永住者の中には、一つの国籍を基にしたアイデンティティを望む者もいる。すなわち、在日外国人の全てが日本国籍を望むものではなく、特別永住者の中にあっても、自己の国籍のあり方には様々な受け止め方が存在している。日本国籍の取得を望まない人も当然いる。弊会と特別永住者関連団体には交流がない。これは、複国籍の容認が直接的に全ての特別永住者への利益につながるものではないことが、一因になっていると思われる。」

「しかし、在日2世、3世と言われる方々には、例えば日本国籍を維持したまま、韓国籍を再取得したい、あるいはその逆で韓国籍を維持したまま、日本国籍を取得したい、という人もいる。特別永住者の子孫が日本に定住し、両国の絆を大切にしている表れだ。複国籍が容認され、具体的に何人程度の特別永住者が日本国籍を取得するのかは、私たちには推測出来ないけれど、必要とする人々にとっては切実な問題であることは理解して頂きたい。」

「国籍法の改正は、前回と同様にヒステリックな反対が予想されるけれど、現行の国籍制度で生活に制限を受けている人、苦しんでいる人がいる以上、早急に毅然とした態度で複国籍を容認する法改正を行ってもらいたい。また、外国人参政権が先で、複国籍の容認はその次といった受け止め方があるのなら、見直してもらいたい。何故なら、複国籍の容認は人権侵害の解消という火急な事案でもあるからだ。」

以上の様な要望・説得を行いました。これを受けて幹事長室の担当からは、外国人参政権が先、といった順番があるわけでなく、それぞれが同じく重要な課題であると受け止めている。複国籍の容認に対する要望はよくわかったので、民主党内でも努力して行きたい、といったコメントを頂きました。

最後に高川の方から、努力して頂けるのは大変有難いのですが、もう実際に動くという態勢でお願いします、と念を押しました。


民主党幹事長室との団体要望の後、土肥事務所のお計らいで、この法改正の担当省庁である法務省へ陳情に向かいました。当初は民事局担当者に対する陳情の予定でしたが、黒岩たかひろ法務政務官が特別に時間を割いて下さり、政務官陳情を受けて下さる事となりました。政務官は、大臣、副大臣に続く地位にある人です。

複国籍PTの法務省陳情は2回目で、1度目は千葉景子前法務大臣への大臣陳情でした。今回は政務官ですが、政務官は実務において大きな権限があると聞いていますので、法務省への働きかけとしては大変重要なものと受け止めています。政府高官に陳情しようとしても、なかなか出来るものではないので、この機会を設けて下さったことに関しては大変感謝しています。

黒岩政務官との会談は法務省の政務官室で行われました。民事局の担当者も同席されていました。これは緊張しますが、陳情における最高の機会であったと思います。

冒頭、黒岩政務官が、「民主党が政権与党になり、請願の紹介が出来なくなって申し訳なく思っている。しかし、重要な問題であることは認識している」と述べられました。「ただ、法改正に至るまでには、もう少し世論の熟成が必要ではないか」、との認識も示されました。法改正を求める声がまだ小さい、と受け止めているようです。政務官としての立場からの発言なので、法務省民事局の見解でもあると推測しました。

そこで複国籍PTとして、政務官の見解と、私どもの見解では少なからず違いがある事を訴えました。その概略は以下の通りです。

「2001年より法改正を求める請願を毎年提出しており、請願紹介議員も約80名になっている。民主党歴代の総理大臣も、過去複国籍の容認には賛成の立場にいた。しかし、法務省民事局の国会答弁は常に、国民的な議論の深まりを注視したいという立場に留まったままだ。」

「2007年には、岩國前衆議院議員が複国籍PTの陳情に合わせて、国会質疑をし、それを弊会代表高川に傍聴させてくれた。その中で、もう日本の社会は複国籍を受け入れる素地が十分に出来ている、熟成した社会にあると述べられた。国会質疑は、国民的な議論の代表だ。自民党からも容認の声が上がっている。河野太郎議員は自民党の国籍PTの座長として、複国籍を容認する座長試案を発表した。」

「2008年には日本弁護士連合会が複数国籍の容認に関する提言書を公表している。ノーベル賞学者である江崎博士も、日本の科学発展の為には、複国籍が認められるべきという立場にいる。この様に各界から声は十分に上がって来ている。」

「実際に複国籍者から窮状を求める様な声が上がらないのは、政府が国籍選択制度を形骸化させ、実質複国籍を容認しているからだ。もし、日本政府が国籍を選択しない者から日本国籍を強制的に喪失させたら、日本弁護士連合会も指摘しているが、人権侵害の問題を引き起こす。しかし、いつまでも法制度を形骸化させていいものではない。」

「また、日本国民で外国籍を取得したい者は、海外在住者に多い。生活拠点が海外にある者にとって、日本の政治の場に声を届けることは大変難しい。その苦労なども、なかなか日本の社会には伝わらない。しかし、在外邦人の親睦団体から、複国籍の容認を求める声も上がっている。特にフランス、スイス、イタリア、アメリカ、オーストラリアなど、欧米の在外邦人団体から声が上がっている。」

「アジアの他の国々、例えば韓国が複国籍容認に転じたことなども踏まえ、日本も早急に法改正をお願いしたい。」

黒岩政務官には関連資料のコピーをお渡しし、一読してもらい、法務省の立場の再考をお願いしました。会談の写真で、書類を手渡しているのは、その陳情用資料です。わざわざ、黒岩政務官がその様な形での写真撮影を提案して下さったので、これは陳情を真摯に受け止めました、という意思の表れであったものと受け止めています。

以上、民主党幹事長室団体要望、法務省政務官陳情とも、雰囲気的には賛同を頂けたものであったように思いますが、昨年は法務大臣陳情までしても、実質的な動きが見られなかったことを考えると、全く楽観は許されません。引き続き、要望や陳情、請願などを行って、働きかけを行う必要があると考えます。

1 件のコメント:

  1. 玉キングです、

    いつも本当にありがとうございます。

    事態が少しでも進展するよう、できるだけのことをしたいと思っています。

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