2016年10月5日水曜日

今こそ複国籍を容認するときです


日頃、複国籍容認を求める請願署名にご理解とご協力を頂きありがとうございます。複国籍PTが請願署名を始めて15年が経ちますが、国籍法の改正への足取りは遅々としております。ここ数年署名数も減少傾向にあります。2015年に集約しました請願署名は401筆でした。この貴重なご署名は、衆議院が横路孝弘元衆議院議長、参議院が福島みずほ元社民党党首を通じて国会に提出致しました。

署名数の減少は、(1)毎年の署名活動による疲弊、(2)国籍選択制度が形骸化し、実質的にはそのまま複国籍の維持が容認されている現状で、差し迫った法改正の要請が生まれなかった、(3)その上で東日本大震災や福島原子力発電所の事故などの混乱があり、問題が置き去りにされてしまった、といった諸事情によるものだと思います。

しかしながら、今年に入り民主党党首蓮舫議員の複国籍問題から端を発し、複国籍の問題が急にメディアを騒がせる状況となって来ました。蓮舫議員への政治的攻撃の為の道具として、国籍問題が利用され、複国籍でいることがあたかも違反者のような批判がなされました。ついには日本維新の会が「公職につく者の重国籍禁止法案」を参議院に提出しました。

この法案は、複数国籍者であることを理由に、複国籍者の被選挙権を剥奪させるもので、複国籍者を選挙権のない2級市民に貶めるものです。複国籍PTはこの法案に強く反対します。また現法案の禁止対象は、選挙を要する公職となっていますが、日本維新の会はさらに国家公務員にまで対象を広げることを視野に入れています。このような活動は明確に、個人の出自を理由に、国民としての権利、および人権を侵害する人種差別です。

ここにおいてもなお、私たちが差し迫った法改正の要請が生まれていないからといって、複国籍の容認を求める声をあげないでいては、複国籍者は国籍法の違反者というレッテルを貼られ、理不尽な差別を受け、さらには被選挙権も、公務員資格も剥奪された2級市民への、被差別民への地位に貶められていくでしょう。これは断じて容認できるものではありません。

蓮舫氏以外でも、自民党小野田参議院議員が日本と米国の複国籍でいるとし、米国籍の離脱を手続き中と報道されました。この騒ぎがなければ、小野田参議院議員が国籍を理由でクローズアップされることはなかったでしょう。有権者は小野田議員の出自より、議員の資質なり経歴なりを評価し投票をしたはずです。小野田議員の国籍に拘泥するより、議員に日米の友好関係の架け橋になってもらう方がよほど有益です。

また、民法のアナウンサーの複国籍についても糾弾されることになっています。具体例としては心無いジャーナリストから、TBSが日本とタイの国籍を持つ、同社山内あゆアナウンサーの解雇を求められました。このように複国籍者への人種差別的な言動がますますエスカレートしています。私達はこれに強い懸念を表します。

これらは、個人の出自・国籍を理由にした人種差別であり、就職の自由を阻害する人権侵害行為です。私達はこういった複国籍者への人種的差別のエスカレートを深刻に懸念しています。複国籍者は国際結婚や海外移住などにより、合法的にかつ自然に増加しております。その一方で複国籍者は今、その出自を政争の道具とされたり、人種差別を叫ぶ集団からの格好の攻撃材料にされています。

参議院調査室作成資料、立法と調査295号(2009.8)「重国籍と国籍唯一の原則~欧州の対応と我が国の状況~」では、「我が国が単独で今後とも国籍唯一の原則を堅持し、重国籍を防止することは困難であると言わざるを得ず、むしろ、どのようにすれば、国籍唯一の原則の理念と重国籍者の増加という現実を調和させることができるかという観点から国籍立法を考えるべきではないか」と結んでおります。9年前の資料です。

法務省は、複国籍の容認は国民の範囲を決める極めて重大な事柄なので、国民の議論の深まりが必要、という姿勢を10年以上取り続けています。その間に、複国籍者は推定で60万人を越し、国籍法は現実にそぐわなくなりました。日本は今、複国籍の容認という現実との調和へ舵を切るべきなのです。

今、私たちは複国籍の容認を求める声を強くあげなければなりません。そうしないと、外国人の血が入っているからとか、外国の気風に感化されているから、などという排外的な理由で、複国籍者への人種差別が露骨に横行するようになります。

近々に複国籍の容認を求める請願署名を再び開始するつもりです。どうかその時は、前回以上のご理解とご協力をお願いいたします。

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